アメリカでは今もみんな室内で土足なのか?

しばらく前に趣味のインターネット活動に勤しんでいたところ、彼女が VR ヘッドセットをつけてゲームで遊んでいる間に家族みんなで協力して彼氏のプロポーズの準備する、という多少人気の出た動画に対するコメントに興味深いものを見つけた。

 なんでこの人たちみんなリビングで靴はいてんの?

それに対する返信のうちのひとつが

 アメリカでは家の中で靴履いてるのが一般的なんだよ(どの家でもとは言わないけど他の国と比べたら 50/50 くらい)

 

50/50?なんとなくアメリカ人でも室内で靴脱ぐ人が増えてる的な話は聞いたことがある気がするけど、半分もの人が靴脱ぐ感じなの?それではもはや「アメリカ人は室内でも土足が一般的」とは言い切れない。それにもし過去一般的だった室内土足がどんどん廃れてきているとしたらみんなが気づかないうちにもう 50/50 を下回って室内土足が少数派になったりするかもしれない。

コロナウィルスの感染率がアメリカで異常に高かった時期に、その理由の推測の一つとして室内土足だからでは?という説があったけど、もし半数の家庭が室内土足ではないなら、この説は仮定として弱いことになる。実際のところどうなんだろう。アメリカ人に聞いてみよう。

 

ということで、職場のアメリカ在住で、人生の途中でアメリカに来た第1世代の移民ではなくおそらく子供の頃からアメリカに住んでいるであろう知り合いに室内土足に関するアンケートをとってみた。ちなみに彼らの国籍やどこで産まれたのか、どこに今まで住んでいたのかなど具体的な詳細は知らないので、厳密に言うと「移民であることを知っている人以外」にお願いした。

質問した内容は以下の通り。

  • 家に入るとき靴を脱ぎますか?
  • (「はい」の場合)どこに靴を置いてますか?
  • (「いいえ」の場合)悪天候などで靴が汚れたらどうしますか?
  • 子どものとき家に入るときは靴を脱いでましたか?
  • そのときはどの国に住んでいましたか?
  • (「はい」の場合)どこに靴を置いてましたか?
  • (「いいえ」の場合)悪天候などで靴が汚れたらどうしてましたか?

靴を脱ぐ人への「どこに靴を置くのか」は、アメリカに来てから家に備え付けの靴箱もないし家具屋を探してもあまり靴箱やシューズラックが売っておらず、みんなどうしてるんだろう?と疑問だったので聞くことにした。靴を脱がない人への「靴が汚れたらどうしますか?」は単純に興味があった。時代で差があるかも気になったのでざっくり子どものときどうしていたかも聞いてみた。

 

複数の現在アメリカ在住の同僚にお願いしたところ、計14人の人が回答してくれた。半分くらいの人は私が住むカリフォルニア・ベイエリア在住で、その他の半分は東海岸在住の人という構成になっているはずだが、無記名回答にしたので細かい数は不明である。

で、これからその回答を発表していくわけだが結構予想外の結果になった。

  1. 家に入るとき靴を脱ぎますか?
    はい :12人
    いいえ:2人

    なんと、靴を脱ぐ人が大多数だった。サンプル数が少ないながら割合でいうと 85% の人が室内では靴をぬでいるということになる。これは「アメリカでは室内で土足が一般的」とはもはやいえないのではないか・・・?

  2. (「はい」の場合)どこに靴を置いてますか?
    ドアの近くのシューズラック:5人
    普段履く靴はドアマットのところ、それ以外はクローゼット:5人
    ガレージ:1人
    ドアのところ:1人

    ドアにシューズラックを置くか、よく履く靴だけドアの近くに置いてそれ以外はクローゼットにしまっておく、というのが多数派のようである。みんな結構シューズラック買うんじゃん。アメリカの家具屋はシューズラックの商品展開をもっと充実させると売上が伸びるのではなかろうか。普段履かない靴はクローゼットにしまっておく派も多い。

    シューズラック派の人で「シューズラック(室内)」と明記していた人も1人いた。近所を歩いていると、ドアの外側にシューズラックを置いている人もたまに見るので、何人かはドアの外側にシューズラックを置いている人もいるかも。そういう人たちが、高価な靴は盗まれたり汚れたりしないように室内のクローゼットに置いている可能性も考えられる。

  3. (「いいえ」の場合)悪天候などで靴が汚れたらどうしますか?
    靴を脱ぐ:1人
    靴の汚れ具合とどのくらいの時間家で過ごすかによる:1人

    この回答は、基本的には2人とも「脱ぐ」だったわけだが、片方の人は例えば短い間さっと家に立ち寄るくらいだったら汚れた靴でもそのまま家入っちゃう、ということだった。私も一人暮らしのときはちょっとした忘れ物をとりに戻るくらいなら土足のままで部屋に入っていたのでなんとなく気持ちがわかる。

ここまでが現在アメリカ在住の皆さんが今どうしているかについての回答である。ここからは、子どものときはどうだったのかについての回答。

  1. 子どものとき家に入るときは靴を脱いでましたか?
    はい :10人
    いいえ:4人

    現在は室内では外履きを脱いでいる人のうち2人は子どものときは室内土足だったそうだ。これは時代を減るにつれてだんだん室内土足の人が減ってきたということなのかもしれない!

  2. (「はい」の場合)どこに靴を置いてましたか?
    ドアのところ:6人
    ドアの近くのシューズラック:3人
    普段履く靴はドアのところ、それ以外はクローゼット:1人

    現在についての質問では多くの人が具体的に「ドアの近くのシューズラック」と答えていたのに対して、子どものころはざっくり「ドアのところ」と答える人が多かった。単純に二度目の同じ質問だから回答を省略したとか、子どものころのことはあまり具体的に覚えていないとかなのかもしれないが、現在ほど家に入るときに靴を脱ぐ習慣が広まっていなかったので靴を置く専用のラックの認知度・普及度が今よりも低かった可能性も考えられる。とっておきの靴はクローゼット派もずいぶん減ったけど、それはまあ子どもだからかも。

  3. (「いいえ」の場合)悪天候などで靴が汚れたらどうしてましたか?
    靴を脱ぐ:4人

    子どものころ室内土足だった人たちは全員、靴が汚れたときはその靴は脱いでから家に入っていたということである。子どものころは親に言われて汚れた靴は脱いでいたけど、大人になってからはちょっと家に入るだけなら汚れててもそのまま入っちゃうよね、ということか。わかる気がする。

ちなみに回答してくれた14人全員現在はアメリカ在住だが、子どものころに関してはアメリカに加えてヨーロッパの国にも住んでいた人が2人、バーレーン在住だった人が1人いた。これらの人たちは全員子ども時代も現在も室内では靴を脱いでいた・脱いでいるそうだ。室内で靴を脱ぐ習慣はこのような人たちから広まっていったのかもしれない。

 

ちなみに子どものときも現在も室内では靴を脱ぐ派のうちの1人は

自分は家に入るとき靴を脱ぐけど人が家に来たときは靴を脱いでもらったりはしてない。自分が靴を脱いでるのは靴を履いている感覚が嫌いだからで、部屋をきれいにしておきたいからというわけではない。犬が家に入ってくるときに外の汚れがどうせ入ってきてしまって掃除せざるを得ないので。

ということだった。確かにアメリカは体感として犬を飼っている人の割合が非常に高い(例えば、私の会社の部署の同僚は7人中4人が犬を飼っている。うち1人は猫も飼っており、残りの3人のうち2人は猫を飼っている。犬も猫も飼ってないのは1人だけ)うえに、みんな犬を室内に入れているので犬が外の汚れを持ってきてしまうから結果として人間も土足にするというパターンもありそう。

「靴を脱いでいる感覚が嫌い」というのもよくわかる。アメリカで国内旅行に行くとき滞在先のホテルは基本的に室内土足なわけだが、リラックスする場所で靴を履いているのが嫌でいつも靴を脱ぎたくなってしまう。他の人は同じ場所に土足で入っているわけなので靴下や裸足で歩き回るのも気が引けて、いつもスリッパかサンダルを持っていってそれを部屋の中では履くようにしている。

 

そういうわけで、私の調べた範囲ではアメリカではもはや室内は靴を脱ぐ人が大多数。室内土足は年々減ってきている、かもしれない。